論文を発表しました!

身体を動かすことができなくなってしまうALSという難病は、筋肉の伸び縮みをコントルールする神経細胞「運動ニューロン」が失われることが原因であることが知られています。このALSの運動ニューロンには、TDP-43と呼ばれるタンパク質が異常な塊を形成して(凝集して)蓄積することが知られています。しかし、ほとんどのALSではTDP-43に変異がないと考えられていて、なぜ、TDP-43が凝集するのか、あるいは、TDP-43が凝集することが運動ニューロンが失われることの原因なのか、という問題が未解明の重要な研究課題として残されています。

この論文では、生体内の運動ニューロンを直接観察することができるゼブラフィッシュという熱帯魚を使って、仮想運動中の運動ニューロンの神経活動をイメージングで解析するシステムを構築することに成功しました。このシステムを使って、変異のないTDP-43の量を増量させた時の運動ニューロンの神経活動を計測しました。その結果、TDP-43が過剰になると、運動ニューロンの神経活動が弱まることがわかりました。この時、ALSで見られるようなTDP-43の凝集は検出されませんでした。

この結果は、TDP-43の量が増えることが、運動ニューロンの機能低下の一つの原因であることを示しています。ALSで運動ニューロンの機能が低下することや、運動障害が生じることの原因である可能性が示唆されます。

この研究成果「Dysregulated TDP-43 proteostasis perturbs excitability of spinal motor neurons during brainstem-mediated fictive locomotion in zebrafish」は、日本発生生物学会の学会誌、Development, Growth & Differentiationに発表されました。

神経変性の研究に取り組むようになってから、発生生物学会に参加することが少なくなってしまいましたが、少しですが貢献できてよかったです。

ALSを発生の問題として捉える研究は少ないですが、ALSの原因を遡れば、遡るほど、発生の問題は考えなくてはならなくなるのではないか、と個人的には予想しています。

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