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ホーキング・フィッシュ

昨年の3月14日、理論物理学者のスティーブン・ホーキング博士が76歳で息を引き取った。ホーキング博士は、筋肉を収縮させる役目を担う神経細胞(運動ニューロン)が変性することが原因で、全身の筋肉が衰えてしまう筋萎縮性側索硬化症(ALS)を長年患っていた。

私は、ゼブラフィッシュという熱帯魚を使ってALSの病気の状態を部分的に再現し、人間では直接調べ難いALSのメカニズムを明らかにすべく研究に取り組んでいる。そのためには、既存の知識では不十分で、運動ニューロンの未だ知られていない基本的な性質を広く深く理解することが欠かせない。

記念すべき一枚(油絵風に加工)

写真は、私が、運動ニューロンの基本的な性質を研究するために開発したゼブラフィッシュを使って撮影した写真。詳しくは割愛するが、この写真には、これまでに知られていない運動ニューロンの(驚きの)性質が写っている。記念すべき一枚。

この写真の被写体となる稚魚を産み出し続けてくれていたオス親(ファウンダー)が、昨年の3月14日に死んでしまった。

私が、ホーキング博士の訃報をネットのニュースで知ったのは、この亡くなった魚が使っていた水槽のラベルをノートに貼るために、フィッシュルームから実験机に戻った、まさにその時だった。

記念すべき一枚を生み出したホーキング系統の開祖(F0、ファウンダー)のラベル

それ以来、この亡くなったオス親の生き残った子孫を、ホーキング・フィッシュと勝手に名付けて呼んでいる。ホーキング・フィッシュは、この一年、大活躍だった。

R.I.P.

月は近い

東の空の月が大きかったので、裏側の嫦娥4号で植物が育っているのを想像。

月は遠くても肉眼で見えるので、例えば、行ったことも見たこともない南極やサハラ砂漠よりは、感覚的にずっと近い。ここ三島市から、月は38万キロ、南極は1.5万キロ、サハラ砂漠は1万キロ。25〜30倍も離れているとは思えない。

遺伝研と月

MRJミュージアムで、「国産」について考える

機体のフォルムは日本刀。赤、黒、金の塗装は、漆塗りの色。コックピットの窓枠には、歌舞伎の隈取り。日本文化をあしらった国産旅客機、MRJ(Mitsubishi Regional Jet)。今日は、名古屋空港近くのMRJミュージアムに行ってみた。

MRJ(Mitsubishi Regional Jet)

見応え十分。機体の組み立てが、ガラス張りの2階から一望できる工場と、さらにその上の3階にある博物館をおよそ2時間に渡って見学できた。100万点ものパーツからなる機体の生産は、産業としての裾野がとてつもなく広い。また、こういった産業や、工場兼博物館が国内にあり、少年少女が産業技術に身近に接することができるの意義は国の将来にとっても、とても大きな意味を持つ。
MRJは、まだ、試験段階で、お客さんを乗せて飛び立っていないが、国産旅客機として、近い将来羽ばたいて欲しい、と応援したい気持ちになった。

さて、MRJを見て「国産」とはなんだろうと考えた。

MRJの機体、エンジン、内装は、日本国内や、海外からとり寄せられた部品からなる。従業員も日本人だけというわけではない。「国産」とは、この場合、日本に責任者がいて、日本の国土の上で機体が組み立てられている、という意味。

かつて、大学院の時に聞いたI先生の講義の内容は忘れたが、「せっかくここまでやったんだから、どうせなら国産の研究として発表したい」というフレーズがあったのを、はっきり記憶している。20年前の当時では、国産=日本の大学にいる日本人研究者が著者、という意味だったと思う。

研究室主催者レベルの国際化、人材の流動が日本では十分ではないにせよ、実験の担い手の少なくない割合が外国人留学生となっている現在は、国産の意味も変化し、日本人の手によって、という意味ではなく、日本の国土で産み出されているということだろう。もはや、人種は関係ない。

最近は、日本のプレゼンスを高めるために、国際共同研究を奨励し、人材や資金などの研究リソースをあの手この手で海外に送り込もうとする動きが盛んだが、日本のプレゼンスを高める国際共同研究とは、国際的な研究協力の枠組みを備えつつ、主要部分が日本の国土で産み出されたものでなくてはならないはず。こういった海外への研究リソースの派遣、提供は、成果における主要研究データが、日本の国土の上で産み出されたものかを基準に評価してもらいたい。一番大事なデータが日本の国土で産まれたか?人種は関係なし。

2019年、あけましておめでとうございます

2019年が始まりました。今日は1月3日ですが、山梨から三島に戻って来て、早速ゼブラフィッシュに餌をあげました。

今年は、昨年の研究の進展をまとめ上げて、論文として発表することが目標です。機が熟しているというか、類似のアプローチを試みている研究グループがあるので、簡単ではないでしょうけれど、上を見て、機を逸さないように発表したい。

尊敬する大先生は、「研究キャリアの中で、解くことができるQuestionは、せいぜい2つだ」とおっしゃっていたが、一発では解けそうに何ので、1つの問題を解く始まりにしたい。

今年も、知らないところに出かけて行っていっては、謙虚に耳を傾け、教えていただき、体を動かす一年にしたい。

年賀状は、七合目で出会った雲海に映る影富士。

本年も、どうぞよろしくお願い致します。

2018年、仕事納めの一枚

本日、2018年の実験部門の仕事納め。

掃除、片付けを終わらせた後、一年の締めくくりのイメージングへ。

この一年は、神経変性疾患、とくに運動ニューロンが変性によって失われるALS(筋萎縮性硬化症)の研究に取り組んだ。

運動ニューロンの変性が始まるか、始まらないかの初期段階とはどのような状態なのか、未だ誰も知らない。ゼブラフィッシュという身体の透明性が高い動物の運動ニューロンをモデルにつかって、神経変性の初期段階を再現し、直接観察してやろうというのが、研究の目的。

2018年最後の一枚。

緑色の運動ニューロンの中にある、マゼンタと合わさって白みがかった2つの細胞が、変性前のストレス状態下にある(と期待される!)、運動ニューロン。

一年で、ここまで進展するとは思わなかった。2019年も実り多い年になりますように。

スーパーお年寄りのポテンシャル

加齢とともに、脳の細胞が変性し失われてしまう認知症などの病では、若者や健康な高齢者には通常は検出されないある異常なタンパク質が、徐々に細胞に蓄積してその働きを弱らせ、やがては細胞を変性させてしまうと予想されている。

12月に参加した学会で、“超”健康にお過ごしのスーパーお年寄りは、こういった異常なタンパク質を除去する「抗体」を持っているのではないか?と予想して、実際に、スーパーお年寄りから異常タンパク質に結合する抗体を発見した、という研究発表を聞いた。しかも、この抗体を投与された認知症マウスの症状も改善したというから、すごい!

今日は、家族のサポートで、富士マラソンフェスタ2018 in FUJI SPEEDWAYに参加。

帰りがけに「一枚、撮ってもらえますか?」と、どう見ても60代には見えないお年寄りランナーに声をかけられた。スマホを返すときに、「結構走るんですか?」と聞いてみると、控えめな小声で「まあ、月に一回ぐらいは。。。」。

「このおじいさん、抗体もってるな、絶対」と、思ってしまった。