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月は近い

東の空の月が大きかったので、裏側の嫦娥4号で植物が育っているのを想像。

月は遠くても肉眼で見えるので、例えば、行ったことも見たこともない南極やサハラ砂漠よりは、感覚的にずっと近い。ここ三島市から、月は38万キロ、南極は1.5万キロ、サハラ砂漠は1万キロ。25〜30倍も離れているとは思えない。

遺伝研と月

2019年、あけましておめでとうございます

2019年が始まりました。今日は1月3日ですが、山梨から三島に戻って来て、早速ゼブラフィッシュに餌をあげました。

今年は、昨年の研究の進展をまとめ上げて、論文として発表することが目標です。機が熟しているというか、類似のアプローチを試みている研究グループがあるので、簡単ではないでしょうけれど、上を見て、機を逸さないように発表したい。

尊敬する大先生は、「研究キャリアの中で、解くことができるQuestionは、せいぜい2つだ」とおっしゃっていたが、一発では解けそうに何ので、1つの問題を解く始まりにしたい。

今年も、知らないところに出かけて行っていっては、謙虚に耳を傾け、教えていただき、体を動かす一年にしたい。

年賀状は、七合目で出会った雲海に映る影富士。

本年も、どうぞよろしくお願い致します。

2018年、仕事納めの一枚

本日、2018年の実験部門の仕事納め。

掃除、片付けを終わらせた後、一年の締めくくりのイメージングへ。

この一年は、神経変性疾患、とくに運動ニューロンが変性によって失われるALS(筋萎縮性硬化症)の研究に取り組んだ。

運動ニューロンの変性が始まるか、始まらないかの初期段階とはどのような状態なのか、未だ誰も知らない。ゼブラフィッシュという身体の透明性が高い動物の運動ニューロンをモデルにつかって、神経変性の初期段階を再現し、直接観察してやろうというのが、研究の目的。

2018年最後の一枚。

緑色の運動ニューロンの中にある、マゼンタと合わさって白みがかった2つの細胞が、変性前のストレス状態下にある(と期待される!)、運動ニューロン。

一年で、ここまで進展するとは思わなかった。2019年も実り多い年になりますように。

スーパーお年寄りのポテンシャル

加齢とともに、脳の細胞が変性し失われてしまう認知症などの病では、若者や健康な高齢者には通常は検出されないある異常なタンパク質が、徐々に細胞に蓄積してその働きを弱らせ、やがては細胞を変性させてしまうと予想されている。

12月に参加した学会で、“超”健康にお過ごしのスーパーお年寄りは、こういった異常なタンパク質を除去する「抗体」を持っているのではないか?と予想して、実際に、スーパーお年寄りから異常タンパク質に結合する抗体を発見した、という研究発表を聞いた。しかも、この抗体を投与された認知症マウスの症状も改善したというから、すごい!

今日は、家族のサポートで、富士マラソンフェスタ2018 in FUJI SPEEDWAYに参加。

帰りがけに「一枚、撮ってもらえますか?」と、どう見ても60代には見えないお年寄りランナーに声をかけられた。スマホを返すときに、「結構走るんですか?」と聞いてみると、控えめな小声で「まあ、月に一回ぐらいは。。。」。

「このおじいさん、抗体もってるな、絶対」と、思ってしまった。

白菜の根元のほうが炒まりにくい効果、について

ブラジルナッツ

ナッツ盛り合わせの上の方には、大粒のナッツがある。これは、違った大きさの粒子に振動を加えると、大粒のものが浮かび上がってくる現象で、大粒ナッツの代表格であるブラジルナッツの名前をとって、ブラジルナッツ効果と呼ばれている。

これに似た現象として、「炒めもので、白菜の根元のほうは、うえに上がってきて、炒まりにくい」というものがある(*)。白菜の根元のほうは、形がカーブしていて硬いので、フライパンの面と接する面積が小さくてそもそも炒まりにくいし、その結果、他の具との隙間が生まれやすい。その隙間に、すでに炒まったシナシナの他の具が入ってきて、結果的に、根元の方の白菜は浮かび上がってしまう。ブラジルナッツ効果は、ある意味「白菜の根元のほうが炒まりにくい効果」と呼べるかもしれない。(*家族による私信。普通は、白菜の根元の方は先に炒めます。)

ミックスナッツ(左)と白菜の根元(右)

脊髄(せきずい)から、軸索(じくさく)とよばれるケーブルを伸ばして筋肉を収縮させる働きをもった『運動ニューロン』と呼ばれる細胞群は、大きなもの(大粒なもの)ほど、背中側にまとまって整列している。大きい運動ニューロンは、ブラジルナッツや根元の方の白菜のように、他の細胞からはじき出されているのかもしれない。

「白菜の根元の方のが炒まりにくい効果」は、「ブラジルナッツ効果」にはない「硬さの差」という視点をもたらしてくれる。大きい運動ニューロンは、小さい運動ニューロンより細胞が”硬い”ので、周囲の細胞にフィットしにくく、背中側に押しやられているのではないか?運動ニューロンの硬さ、という新しい視点。

ALS(筋萎縮性側索硬化症、きんいしゅくせいそくさくこうかしょう)では、大きい運動ニューロンほど変性しやすいことが知られており、この現象の背後にある仕組みを理解するために、大きい運動ニューロンに備わっている特殊な性質を探っています。

バイオリソースのワークショップ:第41回日本分子生物学会

分子生物学会@横浜で、「生物種横断的な研究の進展とバイオリソースの役割」というワークショップを開催しました。短めの発表時間で、演者の皆さんには申し訳なかったですが、面白い発表、鋭い質疑ありがとうございました。私は、ゼブラフィッシュを使ったヒト疾患研究について「光照射によるALS病態の再現にむけて」というタイトルで口演しました。忘れられていたリソースでも、発見や技術的な進歩によって、宝の山に変わることがあり、歴史と先端の両方を理解しながら、適正規模でリソースを開発、維持するために、皆さん試行錯誤を積み重ねていることが良くわかりました。