執筆を分担した「ゼブラフィッシュ実験ガイド」(朝倉書店)が出版されました。ライブイメージングの章を担当しました。
私は、酵母菌という単細胞生物を使って細胞が分裂する仕組みを研究していましたが、その流れを汲んで、ゼブラフィッシュを使いはじめてからすぐに、将来、脳の神経細胞になる神経前駆細胞(しんけいぜんくさいぼう)と呼ばれる細胞の分裂の様子を直接観察することに取り組みました。程なくして、微小管(びしょうかん)と呼ばれる細胞の骨格を蛍光で可視化することで、生体内で細胞が分裂する様子を直接観察(ライブイメージング)することに成功しました(Asakawa, 2010)。

しかし、周囲が盛り上がっている研究テーマの近くにいても、自分の中から湧き上がった疑問がないと、なかなか力は出ないでしょう。それどころか、多細胞生物の研究が初めてだった私は、細胞がある程度死んでも動物自体はびくともしないことに素人的なショックを受けて、なかなかいい疑問を設定して研究を深めることができませんでした。それまで単細胞の分裂に関わる個々の遺伝子機能に囚われすぎて、細胞分裂を広く大きいコンテクストで考えてこなかったツケです。
このような私の黒歴史は、本書にはもちろん書かれていませんが、脳の神経前駆細胞の分裂の観察などを例に、ライブイメージングの基本的なコツが書かれています。あと、本書には書けませんでしたが、ライブイメージングを行うときに、私が一番必要と考えるのは、「忍耐」あるいは「気長さ」でしょうか。大事なのは、「釣れない日もある」を受け入れて、期待した結果が出ない時もめげないことです。
ということで、本書の図を改変した挿絵です。