イトグチとイマシメ

裏づけとなる論文が既に発表できていれば問題がないとおもいますが、新しいプロジェクトに挑戦する時には、新しければ新しいほど実績がないわけですが、それでも研究費を獲得しなくてはなりません。

そんな時には、グラントの審査員の先生方に、達成の可能性を予感させる“イトグチ”となる結果を既に得ていることを申請書の中で示すしかないです。この方法が、よく機能しているのかは別にして、私は、イトグチを示す、一枚の写真を添付します。「これに投資してください」という一枚。とにかくパネル一枚。で、ぱっと見で、瞬間的にわかるもの。真実であれば、荒削りでもOK。

FUS droplets

さて。人体では解析することが難しい病気に関わるタンパク質でも、ゼブラフィッシュのカラダの中に導入できれば、その振る舞いを直接観察して、解析できるようになることがあります。写真は、FUSというALSの原因になるタンパク質をゼブラフィッシュに導入して、生きた魚のカラダの中を撮影したものです。直径10ミクロンぐらいのピンク色の大きな丸が細胞核にあるFUSです。FUSの挙動をゼブラフィッシュの生体内で研究することができるようになったことを示す写真です。初めてのALSの研究費をもたらした、イトグチショットです。

この写真を撮影した2012年は、膜に囲まれていない細胞内の区画、非膜系オルガネラ(membraneless organella)が生体内で重要な役割を果たしていることが詳しくわかり始めて、論文の数も急速に増えて、爆発的に分野が拡大し始めた時期でしょう。この写真をよく見ると、左隅に小さなピンク色の粒々が見えます。直径、2ミクロン以下で、細胞核よりは、遥かに小さい。これはFUSを含む液滴/非膜系オルガネラですが、当時私にはよく見えていませんでした。この時点で、ゼブラフィッシュ体内のFUS液滴をとらえていたということは、さらにおおきなイトグチがあったのに。その5年後、専門家のO先生は、この写真をみるなり「この粒々はなんですか?」、と指摘してくださいました。ということで、今では、この写真は、新しい研究を始めるときには、できるだけ早期に多くの専門家の指導を受けなくてはならない、というイマシメの一枚になっています。審査員の先生がこの液滴を見つけて評価してくれていたなら、だいぶ運を使ったかもしれません。

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