「若い科学者のみなさん、ALSを研究テーマに選んでくれてありがとう」
毎年12月に開催される国際ALSシンポジウムの開会式では、臨床医師と基礎研究者が一つの会場に集まって共通セッションがもたれます。2018年12月、スコットランド、グラスゴーで開催された第29回国際ALSシンポジウムの開会のセッションで、英国アン王女がスピーチの冒頭で、会場にむけてかけられたお言葉。ALSには、いまだ良く効く薬や、治療法がないが、その実現に絶対に必要なのが、ALSに挑む層の厚い研究者です。
昨今の新型コロナウイルスの問題でも、徐々に、そして克明に明らかになってきているのが、問題を根本的に解決できるのは、どうやら研究者しかいないこと。そして、研究者が絶対的に必要とされる局面というのは、危機的ということ。良くトレーニングされた層の厚い研究者を、常に一定数、国内に維持することの重要性が、日本にはそれがほぼ失われつつある(あるいは、失われていた?)事実と同時に、白昼に晒されています。数十年という長期的視点で、経験と体力のバランスがとれた強力な研究者集団を再構築していかなくてはなりません。今、日本国内でワクチンや治療薬の開発に取り組んでいる研究者は、勇者です。
アン王女のお言葉が、年齢的に私に向けられたものかはわかりませんが、その場にいた私の心は深く揺さぶられました。うまく言葉にできませんが、研究をしていて、こういった気持ちになることはめずらしい。
先々週の講義のレポートが学生さんから届きました。その中に、大学院の研究テーマとしてALSを研究している学生さんがいましたので、レポートの返信には、アン王女のお言葉を引用して、感謝を添えました。
「ALSを研究テーマに選んでくれてありがとう」