ALSでは、神経細胞(ニューロン)の変性が、遺伝情報を含むDNAが収められている細胞体(さいぼうたい)から始まるのか?それとも、筋肉と接する軸索(じくさく)の先端から始まるのか?という議論があり、決着がついていません。ニューロンが変性し始める時期は、まだ患者さんが自覚できる症状はないので、今は、なかなか調べるのが難しいのです。
お世話になっている先生が、この問題を突き詰めて考えているときに、ある日、ひまわりをご覧になって、ひまわりが花から枯れるのか、根っこから枯れるのかを、じいーっと観察し続けたと言います。
昨日は、そんなエピソードを思い出しながら、絵を描いてみました。例えば、人間の脳の一次運動野という、運動を指令する領域には、ベッズ細胞(Betz cell)というとても大きな細胞があります。どのくらい大きいかというと、細胞体の直径が100ミクロンにも達するものがあり、直径20ミクロンの軸索を、脳から脊髄の腰レベルにまで伸ばしています。成人で、およそ1メートルになるでしょうか。この長く太い軸索は、筋肉を収縮させる運動ニューロンと接続しています。ベッツ細胞を、直径3センチのひまわりに例えるなら、軸索の長さは、なんと1.5キロにも達するのです!
このような細長い、大きな細胞を、一生にわたって維持するのは大変なことだと感じます。運動の度に、神経活動を繰り返し、消費したエネルギーを過不足なく補充しなくてはなりません。ALSでは、ベッツ細胞が変性しますが、それが何時、どのように始まるのか、謎です。
花から枯れるのか、根っこから枯れるのか。
ひまわりでは、この問題が解明されているのでしょうか、先生?