
ナッツ盛り合わせの上の方には、大粒のナッツがある。これは、違った大きさの粒子に振動を加えると、大粒のものが浮かび上がってくる現象で、大粒ナッツの代表格であるブラジルナッツの名前をとって、ブラジルナッツ効果と呼ばれている。
これに似た現象として、「炒めもので、白菜の根元のほうは、うえに上がってきて、炒まりにくい」というものがある(*)。白菜の根元のほうは、形がカーブしていて硬いので、フライパンの面と接する面積が小さくてそもそも炒まりにくいし、その結果、他の具との隙間が生まれやすい。その隙間に、すでに炒まったシナシナの他の具が入ってきて、結果的に、根元の方の白菜は浮かび上がってしまう。ブラジルナッツ効果は、ある意味「白菜の根元のほうが炒まりにくい効果」と呼べるかもしれない。(*家族による私信。普通は、白菜の根元の方は先に炒めます。)

脊髄(せきずい)から、軸索(じくさく)とよばれるケーブルを伸ばして筋肉を収縮させる働きをもった『運動ニューロン』と呼ばれる細胞群は、大きなもの(大粒なもの)ほど、背中側にまとまって整列している。大きい運動ニューロンは、ブラジルナッツや根元の方の白菜のように、他の細胞からはじき出されているのかもしれない。
「白菜の根元の方のが炒まりにくい効果」は、「ブラジルナッツ効果」にはない「硬さの差」という視点をもたらしてくれる。大きい運動ニューロンは、小さい運動ニューロンより細胞が”硬い”ので、周囲の細胞にフィットしにくく、背中側に押しやられているのではないか?運動ニューロンの硬さ、という新しい視点。
ALS(筋萎縮性側索硬化症、きんいしゅくせいそくさくこうかしょう)では、大きい運動ニューロンほど変性しやすいことが知られており、この現象の背後にある仕組みを理解するために、大きい運動ニューロンに備わっている特殊な性質を探っています。